「俺と一緒に旅に出ようよ、アルバ」
そういって手を差し出したのは、魔王の息子の三男坊。
私はずっと、この狭くて愛しい田舎の村で生きていくんだと思っていた。
自警団の一員として獣や魔物から村を守りながら、たまに来る冒険者や行商人など旅人の世話を焼き、代わりに少しばかりの話を聞く。
冒険者に憧れを抱いてはいても決心がつかず、旅立つきっかけが持てないままに過ごす日々だった。
そんな迷いを一瞬で断ち切った貴方には、本当はとても感謝している。悔しいからそんなこと絶対言わないけれど。
これはそんな私と貴方の、ほんの一時の物語。